義母がいる施設はユニットケアといい小規模のグループ(ユニット)に分かれています。
1ユニット10名で食事はその10名で共通エリアで取ることになっています。
義母の個室に行くまでにその共通エリアを通るのですが、
必ずぎょろっと睨むおばあさんがいます。
「こんにちは」と言っても何も反応がないので、
認知症が進んで話せないのだと思っていました。
ところがそうではなかったのです。
ちょうど個室から廊下に出て義母のリハビリ(バーを使って前後に歩く)を見ていたのですが、
すぐ先で、介護士さんがその怖いおばあさんに話しかけていました。
するとそのおばあさんが喋ったのです!
外国でスタチューと言われる 銅像と思ったら生身の人間が仮装していて
驚いたことがありますが、それくらいビックリしました。
その介護士(女性)は笑い上戸。
「あははは。○○さんはなんとかかんとかなのね。あはははは」
会話の半分は笑っています。
見ると普段険しい顔をしているおばあさんの表情が優しくなっています。
「料理をするのが好きだったのね」(たぶんご主人のこと)と
はっきり聞き取れる日本語で話しているではないですか。
先日の病院から来た看護婦さんと言い、今日の看護師さんといい
相手のこわばった心をほぐす笑いのオーラがすごい!
「にもかかわらず笑う」というのは、相手がどんなに不機嫌な顔であっても
自分はほがらかにいるということなんですね。
たまたま家に帰ってテーブルの上にあった雑誌を開いたら
ユーモアの記事が載っていました。
「目の前のつらい現実を一言のユーモアが一掃してくれるわけではありませんが
停滞しこわばっていた気持ちが笑うことで一瞬持ち上げられて殻が外され、
身動きが少し楽になったように感じられます。
自分の内部に新しい力が湧いてくる。
そんなふしぎな力をユーモアは運んできてくれるのです」
「笑うことによってひとまず受け入れるということは
『いま』という一瞬を最も上手に生かして用いていることに通じるように思います。」
「笑えない状況にあって、あえて笑いを演じる気持ちを、
私たちはいつもそっと携帯していたいと思います。」
「生き方上手 日野原重明著より」
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