誰でもかっこ悪い自分は見せたくない。

苦労したことや失敗したことは隠して、

上手く行ったことだけクローズアップして人に見せたいものだ。

 

けれども、人が勇気をもらい、励まされるのは、

その人が、みっともない姿や失敗談を隠すことなく素直に語っているときではないだろうか。

 

42歳の春、私はジャズダンスを始めることにした。

 

私がジャズダンスに抱いていたイメージは「セクシー」

 

 

ミュージカル「シカゴ」や「コーラスライン」を思い浮かべてほしい。

 

黒いスパンコールハットをかぶって颯爽と歩き、

振り向くと、その鋭い視線に男どもはイチコロ。

 

 

かたや私は黒いおっさんサンダルを履いて、

庭でしゃがんで草むしり。

振り向くと、その素早い両手に蚊たちはイチコロ。 

 

イヤだ、このまま草むしりばあさんにはなりたくない!

 

命短し踊れよ乙女

 

 

初めのころは、体がガチガチで、柔軟体操をするのも一苦労だったが、

毎週ジャズダンスのクラスに参加している内に、

体が柔らかくなり、できなかったステップが少しずつ踏めるようになった。

そうなると楽しくて仕方がない。

 

ダンスのある日は、息子に「母さん」と呼ばれても答えない。

「今日はあなたたちの母親ではない。ダンサー・マサコよ!」

 

3年目にはカルチャーセンターでは物足りなくなり、

一時間かけて、その先生のダンススタジオまで通うことにした。

 

そして怖いもの知らずの私は、次の発表会で、

劇団四季を受けるような若い子たちに混じって踊ることにしたのだ。

アップテンポの目まぐるしく動き回るダンスを。

 

カルチャーセンターの場合、ダンスの振り付けは、少しずつ教えてもらえるのだが、

スタジオのダンスの振り付けは一回で終わる。

 

夕方5時から始まり、終わったのは夜10時。

とても覚えられないので、高いところにカメラを設置して(まだスマホはない時代)録画する。

そして次の日に録画を見て絶句した。

 

袋小路に追い詰められた間抜けな泥棒が、

逃げ場を探してキョロキョロしている。

動きが速すぎてついていけないのだ。 

こんな自分を見るのは初めてで、

あまりの酷さに吐き気を覚えた。

 

 

デジタルイラスト師匠岩橋鈴子さんにキョロキョロしている

描き方教えてもらいました。

 

ぶ・ざ・ま

 

この言葉が自分ごととして、現実として実感できた。

 

もう二度と見たくないし、絶対、誰にも見られたくない。

ゴミ箱に捨てたい気分だった。

 

私が発表会の練習を始めた頃、

次男は高校3年生になって初めての模擬試験を受けていた。

高2の秋から受けていたので、

3度目くらいだったのかもしれない。

 

友人は皆いい成績だったのに、

自分だけ低かったらしい。

努力しても成績が上がらず自信をなくしていた。

 

志望校はもう無理だと言う。

まだ5月だというのに。

 

夫が話を聞き、

諭すようなことを言っているが、

全く耳に入っていない様子。

 

悩んでいる息子を見て私はこらえきれず言った。

「諦めるのは、早いんじゃない? 

先生が、ダメと言わないんだったら

もう少し頑張ってみたら?

お母さんだって、

こんな難しいダンスどうやって踊れるようになるのか

全くわかんないけど、少しずつ練習するつもりよ」

 

 

そう言って私は、あのおぞましい映像を息子に見せた。

 

今考えても、どうしてあれを見せようと思ったのかわからない。

 

子供を救いたい一心だったのかもしれない。

私はとても見る勇気はなかったので、

録画をスタートするとすぐに台所に逃げた。

 

息子は、何か感じてくれたのだろうか。

それはわからない。

 

でも、あの辛そうだった、

思い詰めていた顔が、緩んでいた。

 

気のせいかもしれないが、

くすっと笑っていたような気がする。

 

ぶざまな姿は人に勇気を与える。

 

私だって子供や、生徒さんには

かっこいいところを見せて

 

「お母さんってすごーい!」

「先生ってさっすが~!」と言われたい。

 

でも親や先生が立派すぎると、

悩みがあっても打ち明けにくい。

だめなところも失敗したこともさらけ出すと、

人は安心して心を開いてくれるのではないだろうか。

 

 

私の講座「ユーモアコミュニケーションクラス」では、

自分の人生について短いスピーチをしてもらう。

最初は当たり障りのない話をしていた参加者が、

だんだんと隠していた自分をさらけ出して行く。

そして素の自分が出せるようになると

そんな自分を笑えるようになっていくのだ。

 

 

上智大学のアルフォンス・デーケン氏は

著書『ユーモアは老いと死の妙薬』で書いている。

 

「ユーモアには

自己風刺と自己発見という大きな役割がある。

 

特に中年期からは、会社向け、家庭向けと、

様々な仮面をかぶって生きていく必要に迫られることが多い。

 

最初は仕方なくつけたつもりの仮面が、

いつしか脱げなくなって、

本当の自分自身の顔を見失ってしまったりする。

 

ユーモアと笑いは、

そうした見せかけの仮面をはぎとって、

本来の姿をさらけ出してくれる。

 

ありのままの自分を謙虚に受け入れる上でも、

ユーモア感覚は非常に大切な役割を果たす。

自分の失敗や欠点を

周囲の人と一緒に笑い飛ばすユーモア感覚を磨くことは、

これからの高齢化社会を明るく生き抜くためにも、

多いに必要ではないだろうか。」

 

仮面を外して、素の自分を笑って、

明るく生きていこうではないか!

 

仮面ライダーならぬ、仮面はイラナイダーたちよ!

 

 

長文読んでいただき、ありがとうございました。

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