事故にあったり、病気になったりしたとき、
人は笑うことを忘れてしまう。
15年前アメリカで交通事故にあった。
小学校が始まる3日前のことだった。
救急車2台が来た。
人生はこんな風に一瞬でひっくり返されるのだと知った。
夫は膝を骨折、
長男も腹部をつよく打ち、入院。
私も1週間後、手を怪我していたことがわかった。
夫の足の手術の日は、
朝から二人ともほとんど口をきかなかった。
「麻酔から目がさめなかったらどうしよう」
「何かあったとき、専門用語がわかるだろうか。」
私は重い気持ちで車いすを押して待合室に入った。
夫はギブスをはめ、私は手に白い包帯を巻いていた。
すると恰幅のいい50歳くらいの看護婦さんが、突然叫びだした。
「あ~ら、どっちが先だったの? あなたが奥さんを蹴っ飛ばしたの?
それともあなたが旦那さんをパンチしたの?」
それを聞いて私たちは思わず、声をあげて笑い出した。
それは久しぶりの笑いだった。
その途端、それまで私をぎゅーと抑えつけていたものが、
ふっと取れて体が急に軽くなった。
息が吸えるようになった。
笑いの力ってすごい!
さっきまで不安な気持ちで押しつぶされそうだったのに、
30秒くらい笑っただけで、こんなに軽くなったのだ。
「きっと上手くいく」そんなふうに思えた。
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