前回の続きです。 
 
前回までの話をまとめると、ユーモアで大切なことは次のようなことでした。
 
 
・ 人をけなさない
・ 権威やプライドなどを捨てる
・ 謙虚になる
・ 自分を肯定する
・ 自分を受け入れてくれる人に支えてもらう
 
 
では、人に受け入れてもらうにはどうしたらいいのでしょうか。
 
 
「相手を受け入れるって、お互いさまだと思うんです。
だから、自分が先に相手を受け入れた上で、受け入れてもらえるかどうかは相手次第、という気がします」
 
 
「相手を受け入れるためにすべきこと、ですか?
 
まずは話しかけやすいと思ってもらうこと、
 
そして、話をしてもらえたら、きちんと向き合い安易な批判などしないで、真剣に聞くことでしょうか。
 
じつは、このことは大学時代に、ある中学生に教えてもらいました」
 
 
その中学生は、出会ってすぐには石渡さんを受け入れようとしなかったそうです。
 
 
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
 
その人が大好きなことを調べる
 
「大学時代、とても個性的な中学生の家庭教師を引き受けたことがありました。
 
ご両親の説明によると、中学には行ってはいるが、友達がまったくいなくて、毎日まっすぐ帰宅すると部屋に引きこもってしまうのだそうです。
 
『先生、無理に勉強を教えなくていいです。どうしても勉強をしないようなら、お兄さんのような存在として、仲良くしてくださるだけで結構です』
 
 
いったい、どんな子なのだろう。
 
初日はとても緊張したことを覚えています。
 
初めて会ったとき、彼はひと言も話してくれず、目も合わせてくれませんでした。
 
勉強部屋の本棚には、たくさんの『キン肉マン』の漫画。
 
思わず『キン肉マン好き?』と聞いたら、その瞬間、ほんの少しですが表情が柔らかくなったような気がしました。
 
第1回目の授業で私が発したのは、そのひと言だけ。
 
彼は「うん」すらも発してくれませんでした。
 
私が少し離れたところに座ったまま、ぼおっと本棚や壁を見ているうちに、授業時間終了。
 
お金をいただいているのに、座っているだけ?
 
そりゃ、どう考えてもダメでしょう。
 
 
そう思って、翌日から『キン肉マン』の単行本を第1巻からむさぼり読みました。
 
 
 
 
読んでみると、面白いんです。
 
子供の漫画と馬鹿にしていましたが、大学生の私が読んでも、結構楽しめました。
 
 
読み進むうちに主要なキャラクターに親しみが持てるようになり、彼からしたら初心者に思えるような拙い感想を伝えるようにしました。
 

『この超人、ロビンマスクより強そうだね』

『こときのキン肉マンの顔、笑っちゃうよね』
 
 
 
すると、『うん』『「はい』から始まって、
 
『いまはそう見えるけど、この後ね・・・』などと、少しずつ話をしてくれるようになり、笑顔も見せてくれるようになったのです。
 
ご両親のご希望を尊重して、『仲良くなること』を優先したのが、結果的によかったようです。
 
『キン肉マン』の話で盛り上がるようになると、少しずつ勉強にも取り組んでくれるようになりました。
 
勉強は私が先生ですが、『キン肉マン』は彼が私の先生になってくれました。
 
結局、中2と中3の2年間を受け持ち、当初は成績がかなり悲惨だったこともあり、担任の先生は受験にとても否定的でしたが、
 
どう考えても無理と言われていた私立高校に合格することができ、本人、そしてご家族と喜びを分かち合いました。
 
 
 
いま思うと、じっくり時間かけることは、とても大切だったのだとしみじみ思います。 
 
それに、この子の場合は、『やっぱり僕、勉強したい』と思ったタイミングに、たまたま遭遇したような気もします」
 
時間をかけて築いた人間関係は長続きする。
 

そうした関係では、短い言葉のやり取りでも相手の言いたいことをすっと感じ取れる。 

反対に出会ってすぐにとても親しくなったとしても、長期的な関係を築けないこともある。

いま振り返ると、そんなことを感じるのだそうです。
 
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
 
 
石渡さんのお話を伺って これは生徒と教師だけでなく、すべての人間関係に通じると思いました。
 
まずは、相手を受け入れること。
 
 
相手が大事だと思っていることを尊重することで、自分が受け入れられる。
 
 
それが自分の自己肯定につながり、
その気持ちのゆとりからユーモアが生まれるということなのでしょう。
 
 
最後にいつもの質問をしました。
 
あなたにとってユーモアとは?
 
「ユーモアはWow!です。
 辞書の定義のような言い方をすれば、
 『相手が思わずWow! と叫んでしまうほど、
 
常識や予想を気持よく裏切るようなもの』だと思います」