数年前 自治会の役員をしていたときの話です。
私は6人の班長さんに会報誌を配るのが仕事でした。班長の一人田中さんは70歳くらいの男性。足が不自由だったので、心の優しい私は、田中さんの代わりに会報誌を班のメンバーに配ることにしました。
それなのに、田中さんからは「ありがとう」の一言もない。態度もえらそう。
聞いてみると息子も娘も同居しているとか。でも二人とも忙しいんだ とまるで私が手伝うのが当然のような態度。
「冗談じゃないわ!」 私は手伝うのをやめました。(大して優しくない)
ある時 田中さんが留守だったことがありました。
その次の月、思わず、「先月いらっしゃらなかったのですね」と言ってしまったのです。(うー 憎らしいおじいさんなのに)
2人の会話です。
田中さん 「たぶん買い物に行っていたんだろう」
私 「えぇー!? ご自分で買い物に行かれるんですか?」
田中さん 「そうだよ。足が悪いからゆっくり歩くんだよ。目も悪いから 大きな虫眼鏡持って ひとつひとつ見ながら買うんだ。」
そのとたん、ある映像が浮かびました。
私 「まるで名探偵コナンみたいですねー!」
田中さん「そうだよ。 信号だって色がわからないから、車が止まるのを見てからじゃないと横断歩道 渡れないんだ。」
私 「うぁー スリリングですねぇー!」
一緒に笑ったら 急に距離が縮まりました。
たぶんほとんどの人は、「大変ですねぇ。」と同情すると思います。
でもリスクをとることで親しくなることがよくあります。
それからは、話がどんどんはずみました。得意な料理、フランス留学時代。実は大学で芸術論を教えている教授だったのです。 たまに女子大生が 何人か遊びに来ることもあるとのこと。20分以上話してしまいました。
そして最後にこう言われました。
「あんたも良かったら今度お茶でも飲みにきなさい」
キャー!これってもしかして ナ、ナ、ナンパ?
2015.2.11
■本を出版しました。
真面目すぎる自分を変えたいと思っている人、何でも思いつめてしまいがちな人、もっと自分らしく生きたいと思っている人が、ユーモアで心をほぐして、よりよい人生を過ごすための本です。
→ご購入はこちら